母と娘の関係

当カウンセリングルームにいらっしゃる方の中には「母娘関係」についてのお悩みが少なくありません。
娘という立場でのお悩みもあれば、母親としてのお悩みもあります。
女性のご相談内容が「息子さん」との関係というのは、私の記憶によればこれまで1件もありませんでした。
息子さんの配偶者や交際相手のことでのご相談はありましたが、件数としてはとても少なかったように思います。

そもそも、息子さんの配偶者やお付き合いの相手というのは全くの他人ですので、悩みとしては会社の同僚や近隣の住人との関係に似ています。
環境が変わって関係も変われば、悩みの質も変わってきます。

ところが、実の娘や実の母親との関係となるとそうもいきません。
親子関係というのは基本的にはどちらかが逝去するまで続きますし、場合によってはその後も生き残った側を苦しめる要因として後々まで残ることもあるのです。

私自身も、自分の母親との関係に悩み、また、自分の娘との関係にも悩んだ時期がありました。
自分が「娘」の立場としての悩みと、自分が「母親」の立場としての悩みは、まったく別ものであることもありますが、根底には共通した何かがあるような気もいたします。

それは、自分が母親から受けた呪縛が原因になっているのかもしれません。
そして、私自身が気づかぬうちに自分の娘を呪縛しているのかもしれないという不安があります。


好きな漫画家・萩尾望都さんも、お母さまとの関係にずいぶん悩まされたそうです(『私の少女マンガ講義』新潮社、2018年3月、『一度きりの大泉の話』河出書房新社、2021年4月、『一瞬と永遠と』朝日文庫、2016年5月、などより)。

母娘関係というのはどうしてこうも平和な関係とはならないのでしょうか。

それは、やはり「同性」であるということが大きな要因と考えます。

母親はおなかの中で自分の子を育て、生んだ瞬間、女の子であると耳にしたとたんに「自分の分身」であると勘違いをしてしまうのではないかと思うのです。
その感情は、娘をもつ私としては、わからなくもないのです。
自分の歩んできた道と同じ道を歩ませたくないとか、自分の叶わなかった夢を自分の子に託すとか、そういう気持ちもとてもよくわかります。

ところが、そこで踏みとどまらずに「私の娘だから」「私の娘なのに」・・・

そういう感情が湧き出てきてしまうと、母親は娘が自分の所有物であるという錯覚を起こしてしまうのでしょう。
私の娘だからこうしてくれるのは当然、私の娘なのにそんなことは許されない。
その結果、母は娘を呪縛し、娘はその呪縛から逃れようとあがき、母娘の関係が崩れていく。

母は娘の知らない人生を歩んできています。
娘が知っているのは自分が物心ついたころからの母親の姿だけ。
ところが母親を娘が生まれたときから、いいえ、その前から把握しているのです。
なので自分は娘を100%知っている、という勘違いをしてしまうわけです。

娘は自分とは別の人間
別の人格
別の人生を歩むもの

そう割り切って、一歩下がったところから見守る。もちろん、助けを求めてきたら手を差し伸べることは必要です。
でも、助けを求める前に手を出すことは、ぐっと気持ちを抑えてこらえましょう。

その代わり常日頃から、困ったときはいつでも頼ってきてね、ということを伝えておきましょう。

間違っても、私の母のように
「もうあなたは大人なんだから、自分のことは自分で始末しなさい。決して親を頼ってくることのないように。頼ってきても私は何もしてあげませんよ。」
などと言うことのないようにしたいものです。


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