ゲートキーパーになれなかった私

ゲートキーパーとは

「命の門番」とも言われ、自殺の前兆を示すサインに気づいて声をかけたり、話を聴いてあげたりして、必要なサポートをしつつ見守っていく人のことです。

実は日本では、毎年約3万人もの大切な命が、自らの手によって絶たれているという悲しい現実があります。
先日の、若い人気俳優である三浦春馬さんの突然の自殺に、衝撃を受けた人は少なくないでしょう。

彼の死によって、私は3年前の友人の死の衝撃が大きく思い起こされ、何ともやり切れない気持ちになりました。

自殺をする人は生前に、「死にたい」「苦しい」という思いを周りの人たちに発信しています。
ところが、周りの人がそのシグナルに気づかず、適切な対応が取れずにいますと、尊い命を守ることができません。

その思いをしっかりと受け止められずに過ごしてしまうと、残念な結果につながってしまいます。
死にたい気持ちを抱えている人がそのシグナルを発した時に、その人に寄り添い、適切にサポートしていく役割を担うのが「ゲートキーパー」なのです。

死にたいと思っている人はその反面、「もっと生きたい」という気持ちも持ち合わせていて、心の葛藤が起こっています。その葛藤のはざまで何かしらのシグナルを発しています。

そのシグナルに気づき、その人の思いを聴いてあげ、支え、自死を防ぐことができれば尊い命を失わずに済むのです。
自死によりその人を取り巻く多くの人々も深い心の傷を負うのですから、何としてでもこれを食い止めなければならないのです。

死にたいと思い詰めている人は、精神的に追い込まれているのですからますので、日常の様子がいつもと違うことに気づくことが多いと思います。
  ふさぎ込んでいて元気がない
  目がうつろ、疲労感のある顔つきをしている
  あまり話さなくなった
  ため息が増えた
  食事量が減った
  (食べたがらない、食事が苦痛そう、痩せてきた、など)

ところが、そうではなく、全く普段と変わらなかったとか、妙に明るかったり饒舌だった、という人もいるようです。
この場合は、悩みを話すきっかけを作っていたのかもしれません。
「死にたい」とストレートに話してくれたならその人の苦しみに気づけたのに、とか、変わった様子なんてなかったのに、まさか死んでしまうなんて・・・ということもあるのです。

3年前の夏の日の朝、友人からのLINEメッセージに私は絶句しました。
「Mちゃんが昨日亡くなったそうです。」
「え?どういう事?何があったの?」
「詳しいことはわからないけど。。。明日がお通夜で明後日がお葬式だって。」

Mちゃんと最後に話したのは、その年の2月でした。
彼女から電話がかかってきて、体調が悪くてつらい、と。
その前にも何度か電話があり、話を聞いていましたが、遠く離れて住んでいるため、何をしてあげることもできませんでした。

おまけに3月には娘の結婚式も控えていて、私は母のお葬式と娘の結婚式が重ならないかと冷や冷やしていました。
なので正直に言えば私は、「また病気の話かしら。」と、ちょっと鬱陶しく思ってしまったのです。

「ごめんね、会って話を聞いてあげたいけれど、来月は娘の結婚式があるし、なのに母がもう長くないので病院に行ったりで忙しくて。」
そう言うと彼女は、「ごめんね、そんなたいへんな時に電話して。」と、とても申し訳なさそうに電話を切りました。

あとから考えてみると、お互いの子どもを交えて一緒に遊んだり、子育ての悩みを話したりした仲なのに、彼女の口から私の娘の結婚についてお祝いの言葉が出なかったというのは、彼女の気持ちに全く余裕がなかったということに他ならないのです。

なのにその事に私は全く気付くことができなかったのです。

その後、娘の結婚式、母のお葬式、とバタバタと過ごす間、彼女の事が気にはなっていたものの、7月末の母の納骨が終わったら電話してみよう、と先延ばしにしていました。
ところが、それよりも前に彼女の訃報が届いてしまったのです。

死因は具体的には何の情報もなく、彼女が悩んでいた病気は死に至るようなものでもなかったため、どうしちゃったんだろう、と思っていたところ、別の友人から「自殺」ということを聞かされました。

会って話を聞いてあげられなかったことは、後悔してもしきれません。
私はゲートキーパーになれなかったのです。

三浦春馬さんの周りにも、やり切れない思いを抱えた人はたくさんいらっしゃることと思います。
  あの時、もっと話を聞いてあげればよかった
  それほど辛い何かを抱えていたというのに、どうして気づいてあげられなかったのだろう

私は3年経った今でもその思いを胸に抱えており、それは小さくなるどころか事あるごとに膨らんでいます。

ゲートキーパーになれなかった私。

私は死ぬまで、そのことを重く受け止め、背負って生きていくのです。

カウンセリングルーム ローズマリーは、
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